経済性-本当の意味のローコストとは・・・
私たちは安価でも豊かな生活を送るための家を考えます。建築のコストは大雑把に材料費と手間賃に分けられます。経済的な住宅をつくろうとした場合はこれらの合理化を計ることになります。
コストの安さを売り物にしている建売りの家や企画品の家の場合、出来上がりの見栄えを重要視するため、見せかけであっても一見高級感のある材料を使い、むしろ手間の省力化を計る傾向にあるようです。 合理化は必要かもしれませんが、手抜きに結びつくようではこまります。コストの安い、良質の家とするにはそれなりの工夫と住み手の意識が重要です。

例えば桧(ヒノキ)は強度、耐久性、耐水性とどれをとってもすぐれているが、高級な材料です。しかし木の目にはこだわらず節のあるものを使用すれば案外と安くすみます。また下地に使うような安価な材料でも、使い方によっては見違えます。
土壁等の左官仕上は下地から仕上まで数回の工程を踏み、その手間賃として高級なものとなりますが、下塗りや中塗りの段階で終わらせてしまうのも工夫のひとつです。結構その段階の見た目でも味わいのあるものですし、予算の余裕ができたら上塗りをすればよいのです。
それに下塗りの段階で充分に乾燥させることにもなり、土壁 にとっても良いことにもなります。塗装仕上げやワックスがけ等は、その前の段階までを造ってもらい、後は自分たちで徐々にやることも考えられます。

一般的に建築コストを上げてしまうのは物入や服入、システムキッチン等の造作家具が大きな割合をしめています。間取りの工夫によって作り付け家具を減らし、その分納戸や屋根裏等の部屋を設け簡単な棚ですましたほうが経済的になります。
様々な工夫によって建築コストを下げられますが、やはり一番重要なのは、余分な物を減らし 、過剰な設備を考えず、シンプルな生活を心掛けることです。

豊かな生活感は決して物の豊富さや高級感、利便性から生まれるものではありません。安価な家を造るには以下の項目が重要です。

1. 材料の見栄えにこだわらず、安価な材料でもその素材の持ち味をいかす。
2. 必要以上の手間の合理化をはかる。
3. すぐに完璧にすることを考えず、長い時間の中で完成させることとする。
4. 自分でできることは自分でやる。
5. シンプルな生活を基本とし過剰な設備を省く。

快適性
私たちは『適度な気密』『適度な断熱』性能を持つ、自然環境と強く結びついた住宅をめざしています。みなさんは住宅の中での快適性をどのようにお考えでしょうか。
最近は“高気密、高断熱住宅”ということがよくいわれています。これは建物の気密性能、断熱性能を高度に上げ、外部の影響を極力少なくし、一台の空調機と全室に渡る換気システムを24時間稼働することによって建物内の全ケ所の温度をコントロールし、電気代の節約とともに快適性を得ようという考え方です。廊下を含め全室温度を一定にできるため、吹き抜けを設けるなどして内部を開放的に扱えるという長所があります。空気環境も計画的なシステムにすることによって良好に保てるということです。

しかし、このシステムで得られる空気環境は、ちょうどオフィスビルの室内の環境に似たところがあるように感じられます。空調が完全に完備されたビル中で息苦しさを感じた経験はないでしょうか。閉ざされた環境での生活はそれほど快適なものでしょうか。このような機械化に頼った空調システムはますます自然との接点を希薄にしていきます。機械化の システムでは常にその性能、精度が問題視されるため、より高い気密性、断熱性能 が求められ、外部を遮断する傾向にあります。外部の自然環境は機械化空調システムにとって負荷でしかないのです。

極端な言い方をすれば機械化空調システムにとって一番制御しやすく、性能を発揮するのは外界から完全に閉ざされた状態、例えば窓がなく、断熱材にすべてが覆われた魔法瓶の中の様な状態でなのです。機械に頼りすぎた中では決して健康的で快適な環境は得られません。住宅環境にとって必要なのは高性能としての高気密、高断熱等ではなく、適度な気密であり、適度な断熱です。機械化に頼らない自然環境を一体に取り入れたやわらかなシステムであるべきです。

住宅において快適性は少し暑さを感じても、打ち水によって時折涼しい風が通り抜けていく瞬間だったり、縁側で夕涼みにビールでも飲みながら星を眺め、花火を楽しんだり、秋の夕暮れに詩情を感じたり、冬の日だまりの中で寝っ転がり本を読んだリ、ストーブの火を眺めながら鍋を突っついたりと、春のさわやかな風の中に花の香りを感じたりと四季折々の変化の中で、自然と一体観が感じられるような環境にもとめられるべきです。

快適さとは、自然との触れ合いの中に生まれる、精神的なすがすがしい安らぎ感ではないでしょうか。

省エネ-電気,ガス,水道だけがエネルギーではありません!
資源エネルギーの無駄を省き積極的に環境エネルギーを利用します。単にひとつの家庭で、電気代やガス代等の光熱費を下げる事だけでは“省エネルギー”とはいえません。“省エネルギー”とは、 地球上に有限にしか存在しない“資源エネルギー”(石油、石炭等)の使用を抑えていこうということです。

つい最近まで、地球上に無限に近く存在していると思われてた資源エネルギーは、実は想像以上に短い期間でなくなると言われています。現代社会はその資源エネルギーに大きく依存しています。万能な科学技術が問題を解決すると無邪気に考えても、科学技術は一方でますます地球規模の大きな問題を発生させています。資源エネルギーの使い捨てを前提とした社会は終わりにしなければなりません。

私たちは日常生活の様々なところで、エネルギーの無駄を省く必要があります。それには科学技術による便利さや快適性について、考え直す必要があります。機械にあまり頼らず、もっと自然環境を利用した生活環境に切り替えていくことが重要です。
家の構造は夏にできるだけ開放的で風通し良いものとし、外部への打ち水や、樹木を通過させた風によって涼しさを得るなどの環境が大切です。屋上や屋根の緑化や藤棚によって日射を防ぐ等の方法もあります。
冬には太陽光が家の奥まで差し込むようにし、採熱をはかると同時に夜間まで蓄熱されるような構造とし、暖房機の使用をできるだけ少なくできるように考えるべきです。様々な工夫で自然環境を利用し、空調機を必要としない中間期の環境を、一年を通しできるだけ長く保てるようにすることが大切です。

また自然光をできるだけ家の中に取り入れる工夫によって、昼間はほとんど照明を必要としないようにすることもエネルギーの節約となります。雨水を溜めて庭の散水やトイレの洗浄水として利用する等も有効な方法です。
これらの考え方は“環境エネルギー”を利用することによって“資源エネルギー”の無駄を省いていくことなのです。一方、省エネルギー住宅としては、その環境を維持していくためのエネルギーを考えるだけでは充分とは言えません。その家が造られる時から壊される時までトータルにとらえる必要があります。
省エネルギー住宅の実現のために、製造のためのエネルギー (一次製造エネルギー) の大きい材料を用いるのでは問題があります。断熱材でフロンを発泡ガスとするウレタンや押出しスチレン等の使用は大いに矛盾があります。

建ってから20年ももたないような耐久性の無い住宅ほど、資源エネルギーのむだ使いはありません。できれば何世代かに渡って引き継がれるものであり、できるだけリサイクル可能な素材を使うべきです。また廃棄するのに高いエネルギーが必要なものの使用もさけるべきです。
住宅廃材は産業廃棄物のうちの多くの割合を占めています。しかし現状でも廃棄物処分場の立地は困難で、数年で日本の産業廃棄物処理場は満杯になると言われています。この問題は税金や廃棄物の処分費の高騰として結局は経済的な負担にもなってくると思われます。

資源エネルギーの技術に変わるものとしてますます“環境エネルギー”の技術が見直されています。太陽電池、風力発電等さまざまなものがあります。
しかし住宅においては環境エネルギーを機械化の中で利用する方向(アクティブ)よりは、自然なかたちでの利用の方向(パッシブ)の方がより省エネルギー的であり、健全でより永続性のある方法と思われます。

いずれにせよ環境エネルギーがそのまま資源エネルギーに代替することは、その性格上(エネルギーの有効性において) ありえません。環境エネルギーを有効に扱っていくためには、ひとりひとりの環境への意識の高まりとともに、それぞれの生活習慣の見直しが必要なことと思われます。エネルギー需要の多くが家庭に起因するものであることを考えると、それぞれの家庭での貢献が大変重要なことです。 そしてそのことが結局生活経費の節約にもなるのです。

省エネルギー住宅としては以下の一連のことが需要です。
・“一次製造エネルギー”の高い材料を使わない。
・住宅環境を維持していくのに資源エネルギーを無駄にしない。
・廃棄処分時に問題のある材料は使わない。
・耐用年数の長いものとする。
・なるべくリサイクルのできる材料を使用する。
・“環境エネルギー”を有効に利用していく。

安全性
安心して住める家とするため様々な工夫とチェックを行います。阪神大震災以来、住宅における耐震性能の強化が問題視され、耐震壁の必要性や金物による構造の強化がうたわれています。
しかし単に壁や耐震金物を増やすだけでは地震に強い家を造ることにはなりません重要な事はそれらをバランスよく配置することです。破壊は弱いところに集中します。また地盤や周囲の状況等その土地、場所に対する安全性の配慮も重要です。計画時において様々な構造的検討が必要なのです。

普通規模の木造住宅では確認申請において構造計算書を必要としないため、専門の構造家によるチェックはまれです。一般的には設計者か大工が慣習的に安全とされる部材寸法で構造を決定していきます。細かい部分は大工の良識と良心に委ねられます。大工が地域での評判や、周囲の紹介で信頼が置ける場合は良いのですが、そうでない場合もあるようです。阪神大震災に関するレポートでは様々な問題点が指摘されましたが、その中にも地盤の問題、手抜き・欠陥の問題、設計そのものの問題が揚げられています。

安心して住める住宅を造るために、ひとつにはやはり構造家によりしっかりした構造計算をすることが必要です。構造設計では力の流れを客観的にとらえ、荷重をバランスよく地面につたえてゆく方法を決定していきます。そのため不必要なところに無駄をしない部材の合理化にもなります。現地調査による様々な安全対策も重要です。自分の家の性能が確保されても隣のガケや家が崩れて来るような場所ではなにもなりません。

また、構造設計によって耐震性能が確認できてもそれだけでは安心できません。初期の性能がいくらよくても土台、柱、壁等が腐りやすい状態だと後々問題が起きます。また長期的にゆるみやぬけを発生させ、場所によってはさびてぼろぼろになってしまう釘や金物の使用も考慮する必要があります。隅々まで風通しを良くしたり、また土台のアンカーボルトはステンレスにする等の工夫が必要です。設計段階ではなるべく詳細な構造仕様書を起こすことが重要です。

そして建て方の時点で住み手、設計者、造り手が一緒になって、しっかりチェックをすると良いと思います。このことは職人を疑うということではなく、皆で安全を確認しあうと同時に後々改築や増築する時に、この家がどのように造られていたかを住み手が認識していく上でも重要なことだと思われます。

火災に対する安全性はどうでしょうか。一般的に火災に対して安全なのは、コンクリート造、 鉄骨造、木造の順と思われています。このことは単純に素材が燃えにくい順番ということにあると思われますが、いちがいにそうとばかりは言えないようです。 鉄骨造の場合、火災時ある温度に達すると一挙に強度が落ち、崩壊の危険が生じます。それに対し木造の場合は崩壊にたいしてはねばり強いと言われています。それはある程度木の表面が燃えると、炭化してそれが断熱材の役目を持ち、それ以上なかなか燃えないという特性によります。しかしこのことは構造材の断面積が大きい場合に言えることです。また金物に頼っている木造の場合にも問題があります。

コンクリート造にしても、火災時の被害として人が煙を吸ったために起きた場合が多いことを考えると、決して安全とは言えません。一番は、やはり火災の原因となるような危険な部分を造らないことでしょう。そのことは目にみえる部分だけでなく、隠れた部分、例えば電気系統等にも特に注意をはらう必要があります。隣からの延焼にたいしても考慮しとかなければなりません。

一般には外壁や屋根を不燃にすることでしょうが、樹木が延焼をふせぐのに大変役立つことも考慮すべきでしょう。

健康な住宅-ホルムアルデヒド・ゼロは難しい
できるだけ情報を集め、危険性があると思われる材料は使いません。アトピー性皮膚炎、化学物質過敏症、子供の視力低下、花粉症等、様々な健康障害が“室内空気汚染”が原因といわれています。このような中で多くの住宅メーカーはホルムアルデヒドを使わない接着剤の導入に取り組みはじめています。こうした動きは大いに評価できます。

しかし、ホルムアルデヒドさえなければ、それが“健康住宅” だという訳にはいきません。ホルムアルデヒド以外にも住宅由来の化学物質がアトピー性皮膚炎を引き起こしているという報告もあります。 また他にも人の体に悪影響を及ぼすと思われる化学物質は、実は私たちのまわりに約7万種も存在しているといわれています。これらを含む材料は目にみえる仕上げ材だけでなく、床下から壁内、天井裏まで様々な場所で使用されています。それにまだまだどの材料にどれだけ危険物質が含まれているか、それらがどのように人体に影響を与えるかは、資料不足で詳細には分かっていないのが現実です。

この様な状況の中で“健康な住宅”を確保するためには建築材料のきめ細かなチェックが必要となります。様々な情報を集め、できるだけ安全の高い建材を使い、できれば実績のある自然素材を使うことが重要と考えます。
さらに室内空気汚染の原因としては細菌やダニ、カビの存在があります。これらへの対策としては空気環境が重要な要素です。出来るだけ風通しの良い環境をつくり、調湿性を有する建材を使うことが大切です。

私たちは次に揚げる建材は住宅に使用しないようにしています。

・F☆☆☆以下(よりVOCが多い)の合板(旧Fc1,FcまたはF2,F3)
・F☆☆☆以下のパーティクルボード(旧Fc1,Fc2または E1,E2)
・F☆☆☆以下のMDF(旧Fc1,Fc2またはE1,E2)
・F☆☆☆以下の複合フローリング(旧Fc1,Fc2またはF2,F3)
・ビニールクロス
・ユリア系接着剤を用いた集成材
・レゾルシノール系接着剤を用いた集成材
・フェノール・レゾルシノール系接着剤を用いた集成材
・ビニル床シート
・合成繊維のカーペット
・防虫材による危険性のある畳
・スチレンフォームを使った畳
・グラスウールの断熱材
・ロックウールの断熱材
・ポリウレタン系断熱材
・ポリスチレン系断熱材 (注1)
・自然素材以外の床下防腐剤、防蟻材
・その他随時危険性のあると思われるもの

※2003年07月よりJASおよびJIS表記が変更になりました。
 旧Fc0はF☆☆☆とF☆☆☆☆へとさらに細かく分類されました。

(注1)現在の建材流通を考慮し、現段階では使用する。
    なお、この素材は揮発物質の問題ではなく
    製造および廃棄エネルギーから使用を中止していました。

個性-好き勝手なかたちをつくることではありません!
『あり方』として個性的な住宅を造ることをめざしています。 個性的な住宅は決して“かたち”の奇抜さからだけ生まれるものではありません。大きさや豪華さがその住宅の豊かさをあらわすものでもありません。たとえ小さな家でも空間の広がりがあれば大きく感じられます。予算が無く安価な材料で造られても、かもし出す雰囲気によって豊かさを感じさせます。 大切なのはそこに住む人々が生き生きとし、個性にあふれた豊かな生活を送れることです。

住宅の形態はそんな生活スタイルのための“あり方”として考えられるべきです。

あり方”は住む人、家族によってそれぞれ違います。住宅の個性はその“あり方”によって自然と表現されるものです。

耐久性-長持ちしなければ資産価値は下がり、環境負荷も大きくなる!
私たちは3世代に引き継がれる住宅をめざしています。初期の耐震性能だけがいくらよくても耐久性があるとは言えません。土台、柱、壁が腐りやすい状態ならば一挙に性能が低下してしまいます。

日本のような雨が多く湿気のある環境では建物が痛みやすく、時には部分であってもその建物にとって致命傷になることもあります。
通風等いたみやすい場所の環境には特に注意を払うべきです。設備配管等も建物の寿命に大きく影響します。 耐久性に対する考え方は、単にいたみにくい素材にすることだけではありません。いたんだ場所が簡単に修理、交換ができ、またそれが一時しのぎではなく、まったく元の機能が回復し、その繰り返しによって長くもつようなシステムが重要です。

例えば、茅葺き屋根は数年ごとに茅の先っぽのいたんだ部分を取り除き、少し長めの新しい茅を付けたし葺き直すことによって新築時と同じ状態となり、この繰り返しによって長いこともたせていました。木造建築である日本のお寺や民家が何百年ももっているのは、こういった修理のしやすい構造やシステムにもよると思われます。

耐久性に対する考慮は建物のハード面だけでは充分といえません。日本では住宅の耐用年数は25年程といわれ、欧米に比べずいぶん低い値となっています。これは単に建物が構造上もたなくなるということではないようです。時の変化とともに物が増え、家族構成が変化し、そのような変化に建物が対応しきれず、快適な居住空間が維持しきれなくなることが原因とおもわれます。計画時に充分先のことを視野にいれ、時とともに変化していく状況にしっかり対応できるものとすることが必要です。

アメリカのインディアンには、7世代後の子孫たちに悪しき影響が出ないかを議論し合い、すべての取り決めを行う伝統があるといいます。7世代とはいかなくとも最低3世代くらいは引き継いでいける住宅にすべきです。

耐久性のある住宅の考え方
・地震や災害に耐えうる耐久性を持つ。
・維持管理がしやすく快適な居住空間が維持される耐久性を持つ。
・将来の変化に対応していける耐久性を持つ。
 
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